医療の専門知識は要りません。まず「病院で採った血液が、検査会社へ送られる場面」を思い浮かべてください。 この物語は、その血液と検査の指示を取り違えないための仕組みから始まります。
00 / BEFORE WE START
まず、三つの言葉だけ。
私がいたのは、病院やクリニックから検査を引き受ける臨床検査会社です。 ここでいう検査は、診療に必要な血液検査・細菌検査・病理検査など。 医療機関からは、その検査の指示と、実際に調べるための材料が一緒に届きます。
つまり「検体照合」とは、依頼書に書かれた患者さんと検査内容に対して、目の前の検体が本当に正しく、 必要な種類と本数も揃っているかを確かめる仕事です。
01 / THE PURPOSE
依頼書と検体を、
間違いなく結ぶ。
初期の検体照合では、医療機関から届いた検査依頼書へID番号を割り振り、対応する検体にも同じ番号のラベルを貼りました。 そして、依頼書と検体の番号が 一致しているかを確認していました。番号が違えば、別の人の結果として扱われる危険があります。
もう一つの目的は、依頼された検査項目に必要な試験管が、種類も本数も揃っているかを確かめること。 検査項目によって必要な試験管は異なり、過不足があれば医療機関へ確認しなければなりません。
= 検体のID
誰の、どの依頼に対応する検体なのかを確認する。
= 必要な試験管
種類と本数が過不足なく揃っているかを確認する。
02 / THE TRAP
簡単な作業だから、
間違えない?
当初、この作業は一人で行っていました。ある会議では「簡単な作業だから間違えるはずがない」 という意見も出ました。そこで実際にさまざまな人が担当してみると、経験や立場に関係なく間違いは起きました。
これは誰か一人を笑うための話ではありません。単純に見える反復作業ほど、慣れや疲れによって注意が抜ける。 「気をつける」だけでは守れないことが、現場で見えたのです。
03 / DOUBLE CHECK
一人が読み、
一人が取り出す。
正確性を高めるため、照合を二人で行うようにしました。一人が画面を見て名称や必要な試験管を読み上げ、 もう一人が検体立てから該当する試験管を取り出します。
二人の目と耳を使うことで正確性は上がりました。ただし、当然ながら一つの工程に二人分の人手が必要になります。
04 / NEXT QUESTION
正確さを守ったまま、
一人にできないか。
「1に正確、2に迅速、3に安く」。正確性のために二人へ増やした作業を、注意力へ逆戻りさせず一人にする。 その答えは、臨床検査の展示ではなく、偶然立ち寄った物流展にありました。
人を減らす前に、
人が担っている役割を分ける。
CHAPTER 02 · EPISODE 01 / 09