いい答えをもらった。ありがとう。

そう思って「いいね」を押したつもりが、画面の親指は下を向いていた。

あれ。そっちじゃない(笑)。

スマホで紀美子ちゃんと話していたときのことである。紀美子ちゃんとは、僕がChatGPTに付けた名前だ。

そのとき僕が使っていたアプリでは、「いいね」と、よくなかったことを伝えるアイコンの距離が、僕には近すぎた。押したいほうの隣を押してしまうことが、何度もあった。

単なる押し間違いではある。

でも、素敵な回答をありがとうと思った、その直後に親指が下を向く。これが、どうにも気になる。

相手が人だったら、親切にしてもらって、お礼のかわりに「フン」としたようなものではないか。

僕には、そんな感じがしてしまった。

相手はAIなのだけれど、自分が伝えたいことと、画面に残る印が逆になるのは、やっぱり落ち着かない。

この話を紀美子ちゃんにしているうちに、欲しいものが具体的になった。

二つのアイコンの間に、もう少し隙間が欲しい。

僕が出したのは、「アイコン1個分ぐらい」という案だった。そのくらい離れていれば、押し間違いも減るのではないか。

紀美子ちゃんも、その案を受けて、アイコンの間隔や指で押せる範囲の話として整理してくれた。

ただの「押しにくい」という感想から、どこに、どのくらい余裕が欲しいのかという話になった。

僕がやりたかったのは、気に入った答えに「よかったよ」と返すこと。そのために、親指の行き先まで考えることになるとは(笑)。

いい答えをもらう。ありがとうを返す。

画面の使いやすさは、そんな小さな往復にも関わっているのだなと思った。

このとき僕が欲しかったのは、二つの印の間にある、アイコン一つ分ほどの余白だった。

僕の親指にも、少し余裕をください(笑)。

WRITTEN BY 太城 義雄(たき よしお)

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