江戸の商人が、現代へタイムスリップする。
SF好きの僕には、考えるだけでも楽しい題材だ。見慣れないものだけでなく、聞き慣れない言葉にも出会うはず。そこから、どんなやり取りが生まれるだろう。
2025年2月、紀美子ちゃんと、そんな物語の場面を考えていた。「紀美子ちゃん」とは僕がChatGPTに付けた名前である。
主人公は、宗兵衛という架空の商人。現代の病院へやって来る設定だった。
僕たちが考えていた場面には、医師が「チェック」という言葉を使い、宗兵衛が意味を理解できずに尋ねるくだりがあった。ここでのチェックは、確認や検査のことだ。
こちらには普通の言葉でも、宗兵衛には分からない。 僕の物語では、彼はそうした外来語を聞いたことがない、という設定なのである。
ところが、相談中の案には、その前にもう一つ、外来語が出てきていた。
「病院のロビー」。
待合スペースなどを指す、あのロビーだ。
あれ? 「チェック」が分からない宗兵衛に、「ロビー」も同じように引っかかるはずでは?
先に出てきたロビーを何事もなく通り過ぎて、後のチェックだけに驚く。それでは、聞き慣れない言葉に戸惑うという場面の筋が通らない。
そこで僕は、紀美子ちゃんに、場所の表現を「病院の入口付近」に変えるよう伝えた。
場所を説明する言葉を替えれば、その後の「チェック」に戸惑うくだりを生かせる。紀美子ちゃんも、この変更を反映する返答をした。
物語の大筋を変えるような、大きな修正ではない。 ただ、一つの場面だけを見ていたら、見逃しそうなところだった。
宗兵衛が何を知っていて、何を知らないのか。その設定は、前の説明にも、後のやり取りにも効いてくる。
紀美子ちゃんが場面を整理する。 僕は、それを読み、登場人物の立場で引っかかるところを伝える。
文章がすらすら読めても、登場人物まで、すらすら理解してよいとは限らない。今回、僕が確かめたのは、そこだった。
宗兵衛を現代へ連れて来るのは、物語の仕掛け。 現代の単語まで先回りして覚えさせないようにするのは、作り手の仕事らしい(笑)。
2025年2月の創作相談を振り返った一話です。宗兵衛と病院の場面は、構想中の物語の設定です。