紀美子ちゃんに作ってもらった、ツールの説明資料を読んでいた。紀美子ちゃんは、僕がChatGPTに付けた名前だ。

僕には、何の話か分かる。

でも、これを経験の浅い人が読んだら、どうだろう。

今回の資料は、プログラムの開発や運用に使う道具について、使い方や仕組みを伝えるものだった。僕が読んで分かるだけでは、引き継ぐための説明として足りない。

長く仕事をしていると、見慣れた用語を、そのまま使ってしまう。自分には説明のいらない言葉でも、初めて読む人には、そこが最初のつまずきかもしれない。

そこで、紀美子ちゃんに読み手の目安を伝えた。

開発を始めて、まだ一、二年くらいの人にも理解できるようにしたい。

「初心者にも分かりやすく」だけで済ませず、どのくらい経験のある人に読んでほしいのかを、もう少し具体的にしたのである。

ただし、注文を付ける僕自身にも、困ったことがある。

「僕には無理・・・・38年前に戻ることはできないし(笑)」

自分が知らなかったころの感覚を、そのまま取り出すことはできない。長年の経験は頼りになるけれど、読み手も同じことを知っていると思い込むと、説明の途中を飛ばしてしまう。

紀美子ちゃんには、その読み手を想定して、資料を作り直してほしいと頼んだ。

保存されたガイドには、対象読者が書かれ、用語の意味や、なぜその確認が必要なのかを説明する欄ができていた。

何をする道具なのか。どう操作するのか。出てきた言葉は何を意味するのか。困ったときには、何を確かめるのか。

コマンドや手順を知っている人が読む説明から、これから使い方を覚える人のための説明へ。今回は、そこを向き直ってもらった。

もちろん、対象読者を書いたから、それだけで伝わる資料になったとは言えない。実際に読む人が、どこで止まるのか。それは、読んでもらわなければ分からない。

まず僕ができるのは、自分には分かる、というところで確認を終えないことだった。

経験を積むのに、長い時間がかかった。

だからといって、読む人にも同じ時間を要求する説明にはしたくない。

38年前には戻れない。

でも、説明を始める場所なら、もう少し手前に戻せるはずである(笑)。

WRITTEN BY 太城 義雄(たき よしお)

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